どのような企業も、経営理念に基づいて運営されています。これは介護施設を運営する企業も例外ではありませんが、一方で経営理念と企業理念の違いを正しく理解していないケースも少なくありません。どちらも企業の方向性を示す目標や心がけを意味しますが、経営理念は企業の経営の方針を意味しています。企業理念はその企業のあるべき姿を示したものであり、経営理念が利益を得るためのリアリズムな思考であるのに対し、企業理念は抽象的な願望を形にしようとする理想主義と言えるでしょう。良し悪しや損得で比較できるものではありませんが、一般的には利益追求を第一に考えるのが経営理念、夢や希望を抱くのが企業理念と解釈される傾向にあります。

介護業界においては、経営理念と企業理念のバランスが重要になります。利益を追求する経営理念はやり過ぎると過剰な人員削減や介助作業の手抜きなど、介護の質が下がってしまう原因になります。また、企業理念も度が過ぎると介護現場の実状にそぐわない、机上の空論が横行するようになってしまいます。採算が取れない赤字経営に陥る可能性もあることから、何事もやり過ぎは良くないと言えるでしょう。介護施設は要介護者へのケアを行う場であり、福祉サービスの一環として認識されています。理想的な介護を追求する企業理念を持つことは大切ですが、施設を存続できるだけの利益を得る経営理念を疎かにしてはいけません。

現場で働く人も介護の仕事に誇りを持つと同時に、自身の利益にもこだわる必要があります。